何を教え、何を学ぶか
人生の中には何人もの恩師がいると思います。小学校の先生、中学校の先生、ゼミの教官など、学校の先生を連想することが多いと思います。私の場合、ちょっとやんちゃな時代もあったので学校の先生にも大変お世話になったというか迷惑もかけましたが、恩師という言葉で一番に連想するのは名古屋グランパスエイトでアシスタントトレーナーとして活動していた時の上司です。私が人生で2番目に出会ったトレーナーでした(初対面は高校1年時の選手時代)。徒弟制度ではありませんが、形式的には「師匠と弟子」のような関係でした。しかし私の中では「師匠」ではなく「恩師」として認識しています。これは私の中の勝手な妄想ですが、師匠とは常に先を行く存在だと思います。師匠と思っていてはこの人を追い抜いていくことはできないと思い、「師匠」ではなく「恩師」として認識するようになりました。そういった思考に至ったのには恩師のある言葉がありました。「いつか縦の関係ではなく、同僚として仕事をする時が来るかもしれない。その時にトレーナーとしての見解を意見できなければ仕事にならない。」と。
私がこの恩師の下でアシスタントをしたのは約9ヶ月で、学生生活やトレーナー活動の期間から見ても決して長いわけではありません。実際にアスレティックトレーナーとしての技術はテーピングの切り方くらいしか教わっていません。彼の育成に関する考え方では、自分のコピーを作らないというのが根底にあって、自分で見て、考えて、足りないものを学ぶというというスタンスであったように思います。我々がアスレティックトレーナーを志した頃には公認の資格制度も無く、育成のカリキュラムもありませんでしたので、医学的な検査法なども本で学び、実際に試してみて自分なりの試行錯誤で吸収していったものです。日本体育協会公認アスレティックトレーナーという資格ができ、本格的にアスレティックトレーナーの育成が始まりましたが、あまり教えられた事のない我々にとっては恵まれていて羨ましいと感じる反面、ちょっとした危険も感じます。トレーナーとして必要な思考力が疎かになりがちな気がします。学問的な知識は自分で勉強すれば身につきますし、与えた情報がその人の知識レベルに見合っていなければ混乱を招くこともあります。
今思えば、何も教えられなかったことが結果として自分を成長させてくれていると日々痛感します(実際にはいくつかの印象的な言葉による教育はあったのですが)。当然当時は「なぜ何も教えてくれないのか」と思いましたし、恩師が僕に発してくれた言葉の真意はわかりませんでした。でも知識や技術ではなく、印象的ないくつかの言葉が後の自分自身の転機を生み出しました。そんな一つ一つの言葉から何かを感じ取る感受性もまた、アスレティックトレーナーとして大切な要素だと思います。仕事に必要なスタッフの育成とアスレティックトレーナーの養成、全てが重なるわけではないので難しいですが、難しいからこそチャレンジのしがいもある。そう捉えて向き合っていきたいと思います。
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