“しょうがない”

 私の大学時代の指導教官は非常に温厚な医師でしたが、その指導教官について先輩からこんな事を言われたことがあります。『指導教官の前では絶対に“しょうがない”とは言うな。その言葉を聞くとものすごく怒るから』と。在学中にその真相を知ることはありませんでしたが、卒業後にアスレティックトレーナーの講習でお会いしたときに御本人からその真相を知ることができました。『“しょうがない”という言葉を発した時点で思考は止まる』という事でした。もし人命がかかっている時に思考をめぐらす癖がついていなかったらどうでしょう。“しょうがない”はついつい口にしてしまいそうな言葉ですが、アスレティックトレーナーにはタブーな言葉かもしれません。
 またこんな事も言っていました。そのドクターは学生時代勉強が嫌いでしたが、アメフトのチームメイトがプレー中に倒れた時、たまたま前日に試験勉強をしていたおかげでチームメイトの命を救うことができ、それからしっかり勉強するようになったそうです。自分が怠けそうになる時は指導教官の事を思い出します。大学とは学問を学ぶところですが、学問以外のところでこれだけ大切なことを教えてくれた指導教官には今でも感謝しています。