アスレティックトレーナーの魅力

アスレティックトレーナーの仕事は拘束時間も長いですし、年間を通して休みもほとんどありません。食事を摂る時間を確保できないことも日常茶飯事ですし、仕事とプライベートの境界線も完全に線引きすることはできません。そういった意味で労働条件はかなり過酷と言えます。ではその分収入がいいのかというとそういう訳でもありません。私は本格的にアスレティックトレーナーを職業にしようと思ったときに、恩師から『出産や親の死に目にも立ち会えないかもしれないがその覚悟はあるか?』と言われたものです。仮にチーム専属ではなく会社や医療機関に所属をしていたとしても、一般的なサラリーマンのようには過ごせません。トレーナーを志す若者がいたら、トレーナーという仕事に向き合う覚悟があるかを最初に問いかけてみるものいいかもしれません。少し厳しいかもしれませんが、「定期的に休みが欲しい」とか、「自分の都合を優先させたい」という考えが大きく膨らむならば、きっとその人はアスレティックトレーナーとしてやっていくことはできないと思います。 ここまでアスレティックトレーナーのネガティブなイメージのことばかり書いてきました。しかし我々が上記のような状況でもアスレティックトレーナーを続けているのは、やはりアスレティックトレーナーという仕事に魅力を感じているからです。ではアスレティックトレーナーという仕事の面白さはどこにあるでしょうか。最大の魅力はガイドラインこそありますが、『仕事に形がない』ことなのかもしれません。我々の仕事はこれだけやればいいというものではありません。チーム、選手にとってプラスになる事は自分で考え相談した上で実施していかなければなりません。サボろうと思えばいくらでもサボれますし、逆にストイックに追求していくこともできます。試合の勝敗には色々な要因がありますが、少なくとも我々は自分の仕事への取り組みがチームの勝敗に直結しているという考えを持っている必要があると思います。実際にはサラリーマンであっても、俗に言う『サラリーマントレーナー』にならずに取り組めていれば、アスレティックトレーナーはとても魅力のある職業だと思います。 また恩師の言葉になりますが、アシスタント時代に『チーフとしてやらなければJリーグでトレーナーをする意味が無い』と言われたことがあります。今は本当にその通りだと感じます。やはり責任の大きさが違えば自分自身の取り組み方も大きく変わります。しかしそれは施設に所属していても同じだと思います。どれだけ自分自身の仕事に責任を負えるかが大きな差になります。MCATの一員として常に自分自身の責任と向き合い、MCATがそういった人間の集合体でいられるよう精進していきたいと思います。