三位一体

 三位一体は箕山クリニックの基本コンセプトの一つですが、最近はこの三位一体の大切さを再確認しています。三位一体とは、患者(もしくは選手)をドクター、PT(理学療法士)、AT(アスレティックトレーナー)の3者が連携を取り合い、それぞれの立場からその人に最も適したサポートをするというものです。3者が完全に独立しているわけではなく、重なった領域があることでより踏み込んだサポートが生まれます。そもそもこの三位一体のコンセプトが生まれたのは箕山クリニックが開業する約3年前にさかのぼります。当時私は御殿場市にある病院のスポーツ医学センターに勤務しており、箕山ドクターはスポーツ医学センター長でした。(箕山ドクターとの出会いにも印象深い会話があったが今回は割愛)スポーツ医学センターを立ち上げるにあたり、私がパンフレットのデザインを担当することになり、その時に三位一体のコンセプトをデザインに盛り込みセンター長のチェックを受けに行ったところ、『これいいね~』というやり取りがあったのを記憶しています。
 しかしながらこの三位一体は絶対的なものではないと思います。正直なところ、これを遵守しようと努力した為に復帰が遅くなったのでは??と感じられる症例もあったと思います。その辺りは、どうしたら復帰が一番早いかを3者がスペシャリストの立場から考えて、判断・議論をする必要があるのだと思います。しかしACL(前十字靭帯)再建術後に関しては、三位一体は絶対条件であると感じます。
 世間ではACL再建術後のリハビリは厄介だと言われることもありますが、箕山ドクター、PT宮澤とともに多くのACL再建術後の患者を診てきた印象では、ACLを難しいと感じたことはありません。ドクターが的確なオペと術後計画を立て、PTが機能的評価をして確実にプラン通りにROMを出しつつ疼痛をコントロールする。そして我々ATが筋力トレーニングを含めたアスレティックトレーニングを行なう。これらが当たり前のように流れていましたが、世間ではそれが一般的ではないようです。手術後のこの時期にこの状態…??と思ってしまうものが案外多いのが現状です。
 この三位一体の関係を保つ為には3者の信頼関係が成立していることが必要です。3者は当然違った立場のスペシャリストですから見解が完全に重なるということは無いと思います。ですから3者がそれぞれ他の2者のスペシャリティーと視点を理解しつつ接点を見出していく作業の繰り返しが必要であると思っています。相手のスペシャリティーを理解する為には基礎的な知識を持っているのが前提条件です。そういった意味ではやはり箕山クリニックには色々な条件が揃っているのではないかと感じます。MCATとしてこれからもバランスの良い三位一体を実現すべく、信頼関係を維持できるよう惜しまず努力をしていきたいと思います。

鈴木章史